共用ポータブル磁場発生装置について

 強磁場の発生装置は大型で、一般には専用施設が必要です。1000テスラの磁場発生も東大物性研でのみ可能です。もし強磁場環境を利用したい場合、強磁場コラボラトリーによる国内の共同利用研究の受け入れ体制が確立されています。一方で専用施設の外でも強磁場下での測定を可能とすることで、飛躍的に本領域の研究を発展させることができます。本領域ではこのために、
 ● 「ポータブル40テスラパルス磁場発生装置」
 ● 「ポータブル100テスラパルス磁場発生装置」
を総括班で整備し、各研究項目の研究で共用できる体制を整備します。これによって、現在磁場環境のない研究者も磁場研究を自らの所属機関で行うことが可能となります。

 市販装置ではとどかない20テスラ以上の強磁場環境を磁場専用施設以外の実験室や施設に導入することには、様々な利点があります。(a)準備段階の実験・・・個人研究室レベルで準備実験を行うことで、より高い磁場での本実験の成功確率を上げたり、技術的に困難な実験への挑戦が可能になります。(b)パルス磁場に慣れる・・・定常磁場の利用経験があるけれどパルス磁場の利用経験はない研究者、今までに磁場の利用経験がない研究者、のどちらにとっても、パルス強磁場への入門体験として有意義です。小型パルス磁場装置によってパルス磁場に直接触れる機会がふえることで、少し専門的な匂いのするパルス強磁場のハードルを下げ、領域の発展に貢献することができます。(c)研究の新展開を促す・・・新たなアイデアを自身の所属において短期間で実験に移行できます。従来の研究と連続性のないような全く新しい研究に取り組むことも可能です。例えば生命と磁場など。

「ポータブル40テスラパルス磁場発生装置」5 台は、実験系研究項目のA01~A05 で共用する 40テスラ磁場発生装置です。このような小型磁場装置は量子ビーム施設や個人研究室で利用されてきた実績があります。また、100テスラ発生可能な「ポータブル100テスラパルス磁場発生装置」は、一巻きコイル法によりコイルの破壊を伴って超強磁場を発生します。運用には安全上の注意なども必要ですが、すでに装置開発例があって、 X線自由電子レーザー実験への適用報告もあり、共用装置にできると考えています。日本においては物性研究所以外で100テスラ以上の磁場の発生に成功した例はありません。多様な研究機関での100テスラ共用装置の活用は、本領域の発展に貢献するばかりでなく強磁場科学の基盤強化の上でも意義が大きいです。

 これらの装置は、研究計画以外に公募研究との共同研究においても活用可能で、領域全体に貢献すると期待しています。さらに、研究領域期間終了後には全国共同利用制度の下で共通装置に供することも可能性として想定しています。

 

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