浜崎亜富 Atom Hamasaki

信州大学学術研究院理学系 准教授

「壊れない」では物足りない

オランダの High Field Magnet Laboratory で開催された,ある学会のエクスカーションで美術館を訪れた時のこと。私の目をクギづけにしたのは,言葉通り,釘を溶接して作られたオブジェで,細胞膜モデルとしても知られる“リポソーム”の断面構造にそっくりでした。リポソームはリン脂質の分子集合体で,球状脂質二分子膜のことです。私は学生の時,ミセル内に分子を閉じ込め,パルス磁場を印加して光化学反応への磁場の影響を研究していました。ある時「ミセルのような分子集合体は磁場で壊れないの?」と聞かれましたが,その時は答えられませんでした(この実験では「壊れない」でほしい)。その後,就職先でリポソームへのパルス磁場(20 T)の影響を研究し始めました。ミセルに比べてリポソームは反磁性磁化率の異方性に起因した磁気トルクを誘起しやすい構造です。オランダで美術館を訪れたのはこの頃で,作品の,いかにも磁場の影響を受けそうな構造異方性の表現に嬉しくなりました(作者にはそんな意図はなかったと思う)。ただし,リポソームが瞬間的に破裂するのでは? と思いとは裏腹に,それは簡単に壊れませんでした。さて,そこからさらに10年ほど経過した今,圧倒的な強度のパルス磁場を目の前に,今度こそは!という気持ちです。

高口豊 Yutaka Takaguchi

富山大学学術研究部都市デザイン学系 教授

カーボンナノチューブの励起子エンジニアリング

半導体性カーボンナノチューブ(SWCNTs)は、太陽光吸収材料として優れた特性をもつ。本研究者は、SWCNT/C60ファンデアワールスヘテロ接合を用いた人工光合成(2H2O + 光エネルギー → 2H2 + O2)を明らかとした。この活性向上の鍵は、SWCNT上の励起子からC60への電子抽出速度の向上であるが、SWCNTsの励起子の挙動については未解明な点が多い。そこで、本領域研究では、界面の電子移動速度に対する磁場効果を明らかとするとともに、超強磁場中で観測されSWCNTsの暗い励起子の吸収帯を利用した検討を進める。

米村弘明 Hiroaki Yonemura

崇城大学工学部 教授

金属ナノ粒子を活用した光触媒に対する磁場効果

光化学反応に対する低磁場効果に関する多くの研究では、これらの効果が数%程度である報告例が多い。これに対して、(超)強磁場を活用すると、非常な大きな磁場効果や新規の磁場効果が期待できる。また、異方性による磁化率の差を利用する弱磁性物質の磁場配向では、磁場配向可能かは対象物質における分子数に依存する。(超)強磁場を活用すると、ナノ領域の構造体を磁場によって配向および構造変化させる事が期待できる。さらに、触媒や光触媒における活性点を磁場によって変化させる事も期待できる。
そこで、本研究では、光触媒に対する磁場効果においてキャリア移動に及ぼす磁場の影響を高感度で評価できる手法を開発すると共に、磁場によるローレンツ力や原子欠陥によるスピン分極や負の磁気抵抗など活用して、光触媒反応の促進や光生成物の選択性向上を図る。また、プラズモニック光触媒における金属ナノ粒子のプラズモン光励起で生ずるホットキャリアが与える光触媒反応に対する磁場の影響についても検討する。加えて、光触媒を作製する際に(超)強磁場プロセッシングを行い、界面における活性点のナノ構造を改質し、新規光触媒反応を創出する事を目指す。

研究成果

原著論文

学会発表